FD2シビックのセッティング その7
・操舵に対する初期応答が悪い
・旋回後期のアンダーステアが完全に消えていない
という不満がありました。
ボディを補強することにより、これらの不満が解消し、走行時の安心感も得られるのでは
無いかと考え、2008年シーズンオフに、ボディ補強を行って頂く事にしました。
ボディ専門のエンジニアさん(ベストオートさん)及びチーム(アールエスタケダ)と、
筆者がラリー中に感じた事を踏まえ、どのようにボディ補強していくか、検討を行いました。
シビックは、ノーマルでも十分サーキット走行に耐えるだけのボディ剛性を持っていますが、
ボディに非常に大きな入力の掛かるラリーでは、剛性は十分とは言えません。
特に、フロントガラス下(写真の部分)には大きな空間があり、ダンパーベース、キャビンも
含め、フロント上廻りが少し弱いように感じます。

前廻り(フロントサイドフレーム、ダッシュボードアッパー/ロア、ダンパーベース)を中心に、
当て板やスポット増しの補強、
ロールケージのAピラー止め、開口部スポット増し、フロアスポット増しを行って頂きました。

ボディ補強の効果は絶大なものがありました。
絶大過ぎて、サスペンションのリセッティングが必要となりました。
前後のロールバランスを更に改善する為、Rrスプリングレートを14→12kに変更。


FD2ノーマルは下がΦ70、上がΦ90のテーパースプリング。
よって筆者は、Φ70の直巻きを使用しています。(アッパーシートは製作)
リヤスプリングはスイフト製を使用しています。(フロントはエナペタル製)
スタビはΦ11のまま。
また、Rrダンパーのアッパーマウントラバーがよれて、ダンパーの効きを阻害していると考え、
ダンパーマウントのプリロードを決めるダンパーカラーを短縮しました。

写真では見にくいですが、アッパーマウントブッシュにくっついているのがダンパーカラー。
(ただの鉄のパイプです)
ノーマルが38mm弱に対し、もともと付いていたエナペタルさんのカラーは40mmありました。
つまり、マウントラバーのプリロードをノーマルより弱くして、一年間乗っていたわけです・・・
という事で、ノーマルより若干短くして取り付けました。
ここはかなり効きました。
余談ですが、ここの部位のピロアッパーマウントが発売されていますが、相当効果があると思います。
という事で、何とかリセッティングを終えたのが開幕戦の直前。
テスト不足は否めないところでした。
少なくともドライバーがクルマに慣れる時間がもう少し欲しかった・・・
・2009年開幕戦 ツールド九州
→車の動きが変わりすぎ(笑)
ドライバーが対応できていないのが映像からもわかります(ハンドル舵角が一定しない)
もの凄く車が機敏に動くようになり、かつトラクションも掛かります。
ぶつけたりもしましたが、優勝することが出来ました。
ゴールデンウイークの間に車に慣れ、次戦京都に臨みました。
・2009年第2戦 京都
→車にも馴れ、セッティングの方向性が間違っていなかったことが確認できました。
九州に続き優勝、そして、全く性格の違うラリーで優勝出来た事で、現状のセッティングが、
どんな路面にも対応出来る事を確認出来ました。
以降、セッティングの変更は殆ど行っていません。
という事で、セッティングの変遷をクドクド書いて参りました。
FD2シビックに乗られている方、これから乗ろうとしている方の参考に、
少しでもなれば幸いです。
また、ラリーでFD2シビックを選んで頂ける方が増えて欲しいので、
その一助になれば幸いです。

FD2シビックのセッティング その6
全日本ラリー参戦4戦目のラリーハイランドマスターズ2008で、JN-3クラス優勝を遂げるまで
進化したFD2シビックですが、高速ステージ主体の構成が、我々に有利だった事も事実。
次戦「新城ラリー2008」は、例年低速の狭く滑りやすいコース設定となる為、正に我々の
「進化」の「真価」が問われる一戦となりました。
ハイランドを走って感じた事は、
・操舵応答性が悪い
・旋回後期のアンダーステアがまだ完全に治っていない
シビックは、キャスター角が7°位付いています。
その為、どうしても操舵に対する応答性(切った瞬間の反応)が落ちる傾向にあります。
ハンドルを切ると、車が持ち上がってから、下に落ちながら曲がる、というフィーリングになります。
「よっこらしょ」って感じです。
細い道では操舵に対する応答性が大事。
但し、フロントのキャスターをあまり変化させる事は出来ません。
(アフターパーツでキャスターを変えられる部品は売っていますが、ラリーの車両規則に抵触)
車高の前後バランスを変えることで、対地キャスターを変化させる事も出来ますすが、
それでは、今までのバランスが崩れてしまいます。
旋回後期のアンダーステアも含めて、ボディのサイドフレームやキャビンの補強で、これらの問題点は
解消出来ると思いましたが、インターバルの少ないシーズン中には、実質不可能。
と言う事で、ボディ補強は次シーズンへの課題としつつ、新城用セッティングの検討を行いました。

と言う事で、またしてもRrのスタビです。
ハイブリッド用の12mmを使っていましたが、新城前に11mm(FD1シビック用)をテスト。
Gが大きく掛かると、Rrが砕けて曲がっていく感じはありますが、操舵に対する初期応答性は向上。
という事で、これをオプションとし、ハイランドと同じ仕様で新城ラリーに臨みます。
・2008年新城ラリー(FD2シビック5戦目)
→JN-3クラス優勝(総合7位)
但し、ハイランド程のブッチギリではなく、かなり際どい所まで追い詰められました。
サービスBでRrスタビを12→11mmに変えなければ、負けていたと思います。
という事で、2008年シーズンは終わり、2009年シーズンに向けて、
直ぐにボディ補強の検討に入りました。
続く。

FD2シビックのセッティング その5
2008年の全日本ラリー京都ラウンドを終え、長いインターバルの間に、
先日述べた、キャンバー角やブッシュのテストと平行して、
フロントスプリングも色々テストしました。
経験上、スプリングはレートだけでなく、メーカーや自由長などでも、
フィーリングがかなり異なります。
ダンパーはバネの特性に合わせてセッティングしていく感じです。
内径φ65、自由長200mmで、メーカーの異なる12~16キロのバネを、
1キロ刻みでテストした結果、12キロが良いのではとの結論に達しました。
(この時は…)
また、アクセルに対するLSDの反応を上げる為、イニシャルトルクをUP。
FMSC吉野ヶ里ラリーに向けて、準備万端、のはずでした。
・2008年FMSC吉野ヶ里ラリー(FD2シビック3戦目)
→どアンダー(笑)
やってしまいました・・・
本番に優るテストは無いと再認識。(結果:JN-3クラス2位、総合は13位くらい)
という事で、次戦までの間に、
・スプリングは元に戻す(14キロ)
・ダンパーストロークを伸ばす
(不整路面・コーナーでのトラクション抜け対策)
に加え、ダンパーの減衰力大幅変更をエナペタルさんに行なって頂きました。


左:旧 右:新
リバウンドストロークが大幅に増え、接地性、トラクションが向上しました。
ヘルパースプリングは検討した結果、クスコさんの2キロのものを選択しました。
やはりラリー車は足が長い方が良いようです。
また、前後ダンパー減衰力の変更により、足がしなやかに動くようになりました。
コーナーでの安心感が増え、操舵に対しリニアに反応するようになってきました。

サスと並行して、フロントブレーキパッドの開発も進めていましたが、
BRIGさんのご協力により、非常に良いものが出来上がりました。
FD2シビックは重い(ガス満タンで1300kg位)のでブレーキ負荷が高く、
走行風による冷却がレースほど期待できないラリーでは、ブレーキフェードし易いです。
BRIGさんに作って頂いたパッドは、効き、コントロール性、耐フェード性、などの
性能のバランスが絶妙です。安心してブレーキが踏めるようになりました。
エナペタルさんもBRIGさんも、筆者からの聞き取り+αだけで要望に応えて頂き、
かつ、非常に良いものを造って頂けました。流石プロフェッショナルです。
と、このようにかなりシビックは煮詰まってきたところで、
次のラリー「ハイランドマスターズ」を迎えました。
・2008年ラリーハイランドマスターズ(FD2シビック4戦目)
→JN-3クラス初優勝(総合5位)
まだ完ぺきに仕上がったとは言えないものの、車の動きがずいぶん良くなりました。
前戦FMSCラリー時と車載映像を比べると、差が分かりやすいと思います。
(余談ですが、コ・ドライバーズシートも進化しています)
但し、このラリーはハイスピードで道幅の広いSSが主体でした。
幅の狭い、曲がりくねった「純日本的」林道でのポテンシャルはまだ未知数。
新城ラリーは何度も出場していますので、道の状況は筆者も大体想像できます。
という事で、曲がりくねった狭く滑りやすいコースが主体の、次戦「新城ラリー2008」が、
FD2シビックの「進化」の「真価」を問われる一戦となりました。
シャレじゃないですよ。
ここまで書くのに4日要しました・・・
文才の無さを感じます。
という事で、つづく。

FD2シビックのセッティング その4
昨日の続きです。
京都のラリーが終わって数週間後、めいほうスキー場で車のテストをさせて貰いました。
テスト内容は、フロントキャンバー角。
シビックのフロントサスペンションはストラット式ですので、ピロアッパーマウントと共に、
ナックルとダンパーの締結ボルトのガタでもキャンバー角が調整できます。
シビックは、ノーマルで大体ネガ0.5°位フロントキャンバーが付いてます。
ピロアッパーマウントを使い、ネガ2.5°までキャンバーを付けて京都のラリーに臨みましたが、
タイヤの外側がかなり減っており、あまりタイヤをうまく使えていない印象でした。
これ以上キャンバーを付けようにも、もうピロアッパーの調整幅は限界に来ていました。
そこで、純正部品で売っているキャンバー調整用の細いボルトを使います。
ノーマルのボルトに対し、細いボルトでさらに0.5°程度キャンバーを付ける事が出来ます。
角度を色々変えてテストした所、最適らしき角度(ネガ3.0°位)を見つける事が出来ました。
ボルト一本何百円ですが、結構効果が有ります。
ちなみに、シビックのダンパーとナックルの締結ボルトのトルクは、15~18kg-m。
ちゃんとトルクレンチで締めないと、走行中に緩んだりズレたりするので注意が必要です。
ボルトを繰り返し使用していると、ボルトのトルク係数が上昇して、適正な軸力が出なくなります。
緩めたり締めたりをある程度繰り返したら、定期的にボルトを交換した方が良いと思われます。
また、キャンバー過少も走行性能が落ちますが、キャンバー過大もブレーキングやトラクションが
落ちますので、キャンバーを付ければ良いってもんでも無い、というのがテストして見た結論です。
使うタイヤや走るコースでも、適正値は変わります。
キャンバーに手を入れたついでに、コーナリング中のキャンバー変化も減らしたいと思いました。
そこで、フロントロアアームのブッシュも強化してみることにしました。

前側(コンプライアンスブッシュ)と後側(ロアアームブッシュ)両方共、無限製強化ブッシュに。
ブッシュが強化されれば、横力によるキャンバー変化も抑えられるであろうという狙いです。
結果は・・・ブッシュの効果は感じ取れますが、それほど大幅な変化はありませんでした。
まあ、
いい方向に行っている!
と自分に言い聞かせ、セッティングを続行です。
疲れましたので、今日はこれ位で・・・

FD2シビックのセッティング その3
やっと気持ちが持ち直してきました。

さて、シーズンも終わったので、シーズン中にはあまり書けなかったシビックのセッティングの事を、
少しずつ書いていきたいと思います。
検索ワード解析でも「シビック セッティング」って言うのが多いです。
「ゆるキャラ」とか、「唐津のイカ」といった検索ワードはあまり見当たりませんので・・・
去年、セッティングの話その1と、その2を書いた所で、つい、しょーも無い記事に気持ちが流れて
しまいました。シビック好きの皆様、すみませんでした。
という事で、「その3」を一年ぶりに書いて行きたいと思います。
・シビック デビュー戦(2008年愛媛)
暫定仕様ダンパー、ブレーキ、LSDを付けたのみで、あと全部ノーマル。
→足の接地性が悪く、跳ねる。
ブレーキングで足がすぐ浮いてしまって(特にリヤ)ABSが効きまくりで、しかも止まらない。
危なくて仕方がありません。
SS1走行中、既に目標を「上位入賞」から、「落ちずに無事帰る」に変更。
4位完走(完走4台、実質ベベ)
でも、ロールの角度やピッチングなどはまずまず良い印象を受けました。
何とか完走出来たので、次の課題は「接地性を何とかしよう」となりました。
思い当たる事として、「スタビが効き過ぎてるんじゃないか」というのがありました。
FD2のノーマルはFrに26mm、リヤに21mmという極太のスタビがついています。
(ホンダ車ってスタビ効き過ぎてませんかね・・・)
リヤスタビを外して走ってみたら・・・結構いい感じ。
方向性が定まったので、Rrスタビを弱めることに(ハイブリッド用12mmスタビに交換)

それだけではバランスが取れなかったので、Rrの車高を10mm程度上げてみました。

Rrの車高調整は、スプリングアッパーシートとボディの間にスペーサーを入れて行っています。
アジャスターを使うと、物凄く短いバネしか使えないので、それを嫌ってのことです。
これで、次戦京都に臨むことになりました。
・2戦目のラリー(2008年京都)
→効果テキメン、SS1から3連続トップタイムでトップ争い。
ただ、高速ステージ(ダムサイド)では良いが、ツイスティな道(タツノリパス)でタイムが出ず。
結局、ナイトステージで、補助灯が消えたり点いたりしてタイムロスし2位フィニッシュ。
悔しいような、嬉しいような・・・
ここから長い夏休みに入りましたので、今までで得られた事を整理しつつ、
もう一度、ストローク等を計り直して最適な状態を模索する事に。
・・・カタい記事を書くのは疲れました。
また明日(多分)
