ラリーアメリカのペースノートの話

”ラリーアメリカのペースノートってどんなん?”


これ、とてもよく聞かれるクエスチョンです。FAQです。
エフエーキューって読んでください。



ラリーでは、コ・ドライバーは2つのノート(本)を持ってドライバーに指示を送り、ラリーを戦います。

一つ目は、ルートブック。
スタートしたら、どこにどうやって行けば良いのか、ラリーの専門用語で言うと、リエゾンの道順、が書かれています。
地図と、コマ図、という道の状況や目印を簡略化したものと、コマ図からコマ図までの距離、で構成されています。
これを見て、コドライバーはドライバーに指示を送り、ドライバーはその道順に沿ってリエゾンを移動します。
一般道を走って移動する区間の事をリエゾンといい、交通法規に沿って走ります。


二つ目は、ペースノート。
選手は上記のとおり、リエゾンを経てスペシャルステージに向かいます。
スペシャルステージとは、許可を取り閉鎖された公道で、選手はここで1台づつタイムトライアルをします。
スペシャルステージのことを略して、SS(エスエス)、と言い、複数あるSSの合計タイムで勝敗を決めます。
競技の前の日に、ラリー主催者立ち合いのもと、SSコースを低速で試走する事が認められていて、これを、レッキ、といいます。
ドライバーはここで、コーナーの形状や直線の長さをチェックし、コドライバーに、今のコーナーは右に曲がっていて、直線は何メートルで、と指示します。
それをコ・ドライバーがノートに書きとめ、競技本番では、コドライバーが読み上げる指示を元にドライバーがSSをアタックします。
このノートの事を、ペースノート、と言います。


前置きが長くなりました。
今日はペースノートのお話しです。
前回のラリーの記憶を無くさないうちに、ラリーアメリカのペースノートの話をしたいと思います。


今回のラリーでも、ペースノートは主催者発行の、通称”JENBA”ノートを使用しました。
”JENBA”とは、ラリーのペースノートを作成する為のソフトの名前かなんかだそうです。
お金を払って主催者からJENBAノートを買います。
お金はエントリーフィー(参加料)に含まれている事が多いです。
IMG_2111.jpg



ラリーアメリカでは、レッキが1回しか出来ません。
WRCでも日本のラリーでも、1つのSSにつき2回のレッキが一般的なのですが、こっちでは1回。
よって、ラリーアメリカでは、レッキにてJENBAノートに必要な情報を書き足す、あるいは修正していくスタイルが主流、というか、多分みんなそうやってます。
筆者も同じやり方でやっています。


あと、ラリーアメリカではレッキはノーマルカー、ノーマルタイヤで行う事が義務付けられています。
SSの路面は全てグラベル(未舗装)なので、石や木の枝が落ちており、パンクに気をつけないといけません。
レッキ出来る時間は予め決められており、パンクするとレッキの時間が無くなってしまう為、極力さけなければいけません。
制限スピードを守りつつ、パンクに気を使いつつ、ペースノートを聞きつつ、そこに修正をl加える。
レッキは結構気を使いますし、とても疲れます。
まあ、でも、こっちのスタイルには大分なれましたね。


ペースノートでは、コーナーの曲がり具合を数字で表現する事が多いです。
1、が一番きついコーナー、例えばヘアピンコーナーで、数が大きいほど高速コーナー、というやり方が一般的です。

JENBAノートですが、コーナーの曲がり具合の表記は、1から6まで。
それにプラスとマイナスが付きます。
IMG_2110.jpg



例えば、3+、とは、3だけどちょっと緩め。
5-、は、5だけどちょっときつめ。

1から6までの数字にプラスとマイナスが付くので(1マイナスは無い)計17段階のコーナーの曲がり具合があると言う事になります。
筆者が日本で使っていたペースノートのコーナー表記は10段階、1から10まで。
ですので、1.7倍のコーナー表記があります。
筆者の日本での感覚を、アメリカのそれにアジャストしてペースノートを作っています。

筆者の日本ノートで4のコーナーは、こっちでは3+、日本ノートの5がこっちでは4。

と、イメージはこんな感じです。


コドライバーが読み上げる、4-、5+、というペースノートの指示に対して、大分体が慣れて来ました。
JENBA方式は、個人的な好みで言うと、数字のあとにプラス、マイナス、という言葉を聞くまで、どれ位きついコーナーかが分からないので、 5なら5、7なら7という具合に、数字で一発でズバッと言って貰った方が好きです。
4-と4+、5-と5+ではコーナーの曲がり具合は違ってくるし、コーナーにアプローチする準備を始める地点も変わってきます。
たったゼロコンマ数秒違うだけですが、ハイスピードのSSだと、運転操作の遅れに繋がってきます。


JENBAのノートにおけるコーナーの表記、道の形状の表記は非常に正確です。
例えば、コーナーの曲がり具合が感覚と合わないから数字を直す、という事が殆ど必要ありません。
ただ、筆者にとっては情報が多すぎて忙しすぎる、親切すぎるノートになっています。
書かれていることをそのままコドライバーに読んで貰うと、情報が多すぎて頭の中でとっさに処理し切れません。
そこで、本当に必要な情報だけは残して、いらない情報は消したり、特に重要な事は強調したり、といったメリハリをつける作業を、レッキの最中にします。
JENBAのノートから、速く、安全に走る為に本当に必要な情報だけを吸い上げて整理する感じです。
試行錯誤しながらやってます。


今まではペースノートにおけるコーナーの向きと曲がり具合の話でしたが、次は補助語の話です。
例えば、ペースノートにはこのような記号を使って道の形状が書かれていたとします。

R4+lg<> into L4+ >3+ /Cr 100

ここでlgとか、<>とか、/Crとかが補助語です。
100は直線の距離。ちなみにアメリカでは直線はメートルではなくヤードで表記しています。
lgはロング、<>はオープンタイトゥン、/Crはオーバークレストといいます。
ロングは長いコーナー、オープンは入口より出口が緩くなったコーナー、タイトゥンは入口より出口がきつい、
クレストとは先の見通せない丘になっている所で、オーバークレストは曲がりながらクレストを越える、つまり上って下ることになります。

ですので、先ほどの、R4+lg<> into L4+ >3+ /Cr 100 ・・・これをかみ砕いて書くと、

右の4プラスの長いコーナー、出口で緩くなりまたきつくなる、すぐに次のコーナーが来て左の4プラスで、奥できつくなり3プラスになり、オーバークレスト、そのあと直線100 yard.

となります。

補助語は今まで日本でやってきた(使ってきた)ものが、ほぼそのまま使われているので、特に問題ありません。
日本との差は、先日のラリーの前にも書きましたが、とにかくやたらオーバークレストが多くて難しい、という事です。

例えば、R4+のオーバークレストだと、右に曲がりながら、クレストの頂点で前の荷重が抜けたのち、コーナーを下る。
つまりちょっとフロントが宙に浮いた状態で曲がる事になるので、それを見越してコーナーに入る必要があります。
でも、コーナーが上って下っているので、先は見通せません。

R5+/Crだと、右5プラスでクレスト越えなので、アクセルはほぼ全開。
でもクレストを越えるので、スピードが出ている時はジャンプする可能性があります。
例えばジャンプしたときに、あまりにも外側に膨らみ過ぎて着地してしまうと、コースアウトしてしまい、且つ車速も高いので大クラッシュは免れません。
ハイスピードで曲がりながら、ふわっと地面から浮いて、かつ先の見えないコーナーに入っていくのは非常に怖いです。
オーバークレストにおける、車の走行ラインコントロールとスピードコントロール、これが今回痛感した大きな課題です。
アメリカ人選手(カナダ人とかイギリス人もいますが)は、当然ながら地元なので、こういった走り方、コースに慣れています。
筆者はまだ恐怖心が先に立ってしまい、アクセルを緩めたり、減速しすぎたりして、高いスピードを維持できていません。
そこがアメリカ人選手に負けているポイントだと思います。
慣れている連中と勝負するには、自分も慣れるしかありません。
今回最後まできっちり走り切れたのは、コース習熟、ペースノート理解の面では非常に大きな経験になりました。
昨年までのフォーカスでは、はっきり言ってエンジンパワーが無さすぎて、そこまで考えなくても良かったので・・・


あとは、今回出た課題を次回のラリーで如何に走りに反映させるかです。



さて、今回はルーフからの走行映像も撮りましたので宜しければご覧ください。
これはOjibwe Forest Rally最長ステージのSS11だと思います。

ご覧頂くと分かるように、湖と森のなかを走りました。
ミネソタ州は湖がいっぱいあって、何と15000以上の湖が州内にあるそうです。
なので、全米ラリー選手権Ojibwe Forest Rally に併催されている、アメリカ中西部地区ラリー選手権の名前は、

10000 Lakes Rally

になっています。

かつてWRCの1戦、ラリーフィンランドは、1000湖ラリーと呼ばれていましたが、こっちは10000湖です。
テンサウザンレイクスラリー、なんかかっこいい響きですね。
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